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コラム:Vol.10【食育で語彙力・表現力アップと好き嫌い克服を】

料理をしたり食事を摂る行為は、五感を刺激します。その際、子どもが感じたことを、言葉で表現することで、子どもの語彙力や表現力が養われます。
今号は、主に味を表す言葉に注目します。小学校低学年頃までは、味覚の基本となる五味を正しい言葉で表現できないことがあるので、大人が教えてあげましょう。また、子どもが料理をどう感じているかを正しく把握することで、好き嫌い克服の対策も立てやすくなります。お子様が正しく味を認識し、言葉にしているか注目してみてください。

食育で子どもの語彙力と表現力を育てる

味の基本である五味と、それをどう感じるか、言葉で表すと以下の通りになります。
・甘味 甘い
・塩味 しょっぱい
・酸味 酸っぱい
・苦味 苦い
・旨み 旨みがある 等

例えば砂糖は甘い、塩はしょっぱい、というのは大人にとっては当たり前ですね。ですが子どもにとっては、砂糖の味は「甘い」と表現して、塩の味は「しょっぱい」と表現する、と教えてもらわないと分かりません。
レッスンの際、私は子ども達に砂糖、酢、塩を少しずつ舐めてもらい、「どんな味?」ときくことがあります。すると、特に「しょっぱい」と「辛い」について正しく区別できないことが、珍しくありません。幼児に多いですが、小学生でも見受けられます。その場合は正しい表現を知らないだけなので、教えてあげれば理解してくれます。
普段ご家庭で砂糖や塩、酢を単体で舐め比べることは少ないと思いますが、一度、味をはっきり認識する機会を持つと理解が早いので、お子様と一緒に味を確認しながら、味を表す言葉も教えてあげてください。一度で習得できないこともありますが(忘れてしまうことがあります)、味を正しい言葉で表現することは、子どもにとっては難しいことなので、焦る必要はありません。

ところで、「砂糖、酢、塩」は寿司酢を作る材料です。まもなくひな祭りですが、ちらし寿司や酢の物を作ることがあれば、味見しながらお子様と作業をし、言葉を知る機会にすると、楽しい料理の時間が学びの時間になりますよ!
寿司酢は、米3合に対して以下の量が目安です。比較的甘口の寿司酢なので、お好みで砂糖の量を調整してください。

◆寿司酢のレシピ◆
米3合に対して
酢 大さじ5、砂糖 大さじ3、塩 小さじ1弱

調味料単体の味を認識すると、次は寿司酢のように「甘酸っぱい」などの少し複雑な表現ができるようになります。味覚を刺激し、感じたことをアウトプットする経験は、語彙力や表現力を高めます。食経験が豊富な子ほど、大人顔負けの素敵な食レポをしてくれることが多いです。食育は体を作るだけでなく、子どもの感性も育てます。

子どもが伝えたいことがわかると好き嫌い克服につながる

子どもは、自分が嫌いな味や見た目、匂いのものを「辛い」や「苦い」と表現することがあります。例えばこんな事がありました。

・(大人にとっては)甘くて美味しい紫芋のポタージュを、小学生が「辛い」と言った。理由は、紫色を不快に感じたためだった。
・にんにくの匂いが苦手な子が、味付けは辛くないのに、「辛い」と言って食べなかった。
・焦げ色に敏感な子どもは、大人にとっては食欲をそそる焼き色を見ただけで「苦い」と言って食べなかった。

前述した通り、食べて感じたことを正しい言葉で表現することは、子どもにとっては難しい事なので、このようなことはよくあります。「こんなに甘いものが辛く感じるの!?」などと必要以上に驚いたり、子どもを責めないで下さいね。
このような場合は、子どもの様子を見て、何が嫌なのか、本当の理由を探ってあげることが大切です。子どもが不快に思っている要因がわかれば、それを取り除いてあげれば食べられるかもしれません。
「紫色がいやだったのかな?」「匂いがいやなのかな?」「苦そうだからいやなのかな?」などと誘導してあげると、子どもが不快に思った理由がわかります。
大人も食の好みがあるように、子どもの好みもそれぞれ違うので、そこを知ってあげると、食べられる物が増える可能性大です。例えば、にんにくを使う際は、ごく少量にすれば子どもも大人も同じものが食べられるかもしれません。焦げ色に敏感な子は、焼き色がつく前に取り出してあげれば、喜んで食べてくれるかもしれません。子どもの好き嫌い克服にお悩みの方は、何が子どもにとって不快なのかを見極めて、できる限りそれを取り除く工夫をしていただきたいです。

美味しさの表現は、さらに子どもの表現力を高める

料理を食べる際は、基本の五味が絡み合い、匂いや見た目、食感や環境なども影響して、総合的に判断して「おいしさ」を感じています。そのため、「おいしさ」を表現する言葉は無数にあります。五味を正しく表現出来るようになったら、ぜひ「おいしさ」も言葉にするよう子どもに促して下さい。「お花畑みたいに綺麗だね!」「とろける食感だね!」などと大人が言っているのを聞いて、子どもは表現力や語彙力を更にのばしていきます。
尚、視覚を刺激する色が可愛らしいひな祭りメニューはコラムvol.9でご紹介しているので、そちらもぜひご覧ください。



食事の時間は1日3度あります。その時間が子どもの心身の成長を促す時間になったら嬉しいですね!食育は、大人の声がけ次第で、子どもの学びの量が増えます。是非子どもの語彙力や表現力を引き出す声がけを続けていただきたいと思います。

料理家・キッズ食育トレーナー : 玉田悦子さん

キッズ食育トレーナー。1981年生まれ、千葉県出身、3児の母。
食品メーカーにて開発及びマーケティングに携わった後、料理家として独立。
子どもに様々な食材と触れ合って欲しいという思いから食育活動を始め、2016年に3才~小学生を対象とした食育スクール「青空キッチン市川」を開講(現在月18レッスン開講中)。
その他、コラム執筆やセミナー、フォトスタイリストとしてレシピ開発及び料理撮影等を行っている。
モットーは「食卓を囲む全員にとって食事の時間がもっと楽しいものになりますように!」。食事を作る人も食べる人も幸せであるようなレシピの開発に尽力している。

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※玉田悦子さんは、パソナグループのグループ会社『プロフェリエ』に所属するプロの方です。

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