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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

HR 2016.09.02 イノベーションを生む人材育成と組織づくりとは

文:INITIATIVE(イニシアチブ)編集部

未来に向けて、いま企業が直面する課題は何か、その課題に対する処方箋はあるのか、さまざまな角度から考える連載企画「未来を創る人事」。最終回は、企業はいかにしてイノベーションを生み出す人材を育成していくべきか、そのためにどのような社内体制を構築すべきか、パソナグループの取り組みも交えてご紹介します。



過去の延長線上では戦えない時代に


「日本再興戦略2016」で、政府は目標とするGDP600兆円を実現するための新たな有望成長市場として、IoT・ビッグデータ・AI・ロボットなどの技術的ブレークスルーを活用する「第4次産業革命」を掲げました。そして、その第4次産業革命の鍵になるのは「イノベーション」と「人材」の創出にあると言及しています。

第4次産業革命の波が世界に押し寄せる中、企業はこれまで以上に地球規模での競争に直面していくことになります。こうした環境下で、企業が持続的に成長していくためには、新たな市場を創造する「イノベーション」を継続的に生み出していくことが不可欠です。

かつて「ものづくり大国」や「技術立国」と評された日本は、これまで既存製品や事業の改善を通じて成功を収めてきました。しかし、日本企業がこれまで得意としてきた既存事業の延長線上にあるイノベーションだけでは世界と互角に戦えなくなっていることは、多くの人事担当者が危機感を持って受け止めていることでしょう。

イノベーション人材の想いを潰さない仕組みづくり


それでは、企業が新たなイノベーションを起こしていくために、人事部門には何が求められているのでしょうか?

その答えの一つは、オープンイノベーションに代表される「社内外から多様な人材が集まり、さまざまなアイデアを出し合う環境を創る」ということです。
同じ人材が長く在籍する自前主義的な企業組織では、新しいイノベーションは起きにくくなります。企業の枠を超えた新規事業の開発や、高い知識、専門スキルを有する社外人材をクラウドソーシングなどを活用して登用することも、その解決手段の一つと言えるでしょう。

そして、内部からの働きかけとして、社内にいる「熱い想いをもったイントレプレナー(社内起業家)」を発掘し、彼らの情熱やアイデアを潰さずに育てていく仕組みづくりが必要とされています。失敗を嫌う傾向のある日本企業では、人事評価においてリスクを取った挑戦による失敗を適正に評価せず、既存事業と同様の基準でマイナス評価を行い、意欲あるイントレプレナーのモチベーション低下を招いてしまうといった例も見られます。

これまでのものさしで新しい物事を判断しても進歩は望めません。ある程度失敗を繰り返すことで、ノウハウを蓄積していくケースもあるでしょう。やるかやらないかの二元論ではなく、試した後に元に戻したり、ほかの事業と融合させたりするなどの柔軟性を持たせた事業開発のステップも必要になってくるのではないでしょうか。

このような新たなイノベーションを生み出す組織文化を醸成していくためにも、組織体制や人事評価を変えるなど、社員のチャレンジを奨励・支援できるような環境をつくること。
そして社員が「自分たちとは違う価値観に触れる」機会を提供していくことで、社員の成長の場をつくっていくことが、これからさらに求められていくのではないでしょうか。



イノベーションを支えるパソナグループの取り組み

イントレプレナー育成

昨今、社会課題解決の視点から、またイノベーション創出人材の育成という企業人事の視点から「イントレプレナー」に注目が集まっています。

起業家支援を続けてきた「Impact HUB Tokyo」(株式会社Hub Tokyo)が、「イントレプレナーが企業を超えて加速し合う」状況を創り出すことを目指し、企画したプログラム『イントレ・リーグ』。事業活動を通じて社会の問題点の解決に取り組むパソナグループもその立ち上げに携わり、2016年4月から期間限定のプログラムがスタートしました。

(参考記事:イントレプレナー(社内起業家)とは何か? その可能性と、壁を乗り越える方法 <前編>

イントレ・リーグは、月1回のセッションを通じてイントレプレナーたちが定期的に集まり、コミュニティとして一体化し、互いに切磋琢磨できる環境を提供するプログラム。毎月テーマが設定され、それぞれのフィールドで戦うイントレプレナーたちに役立つコンテンツとネットワークを提供しています。

参加者は、実際に企業に身を置きながら、自分の所属する組織のリソースを活用し、より大きな社会的インパクトを出すこと、そして社会課題を解決していくことを目指す人々。プログラムに参加し続けることで、誰かから教わるのではなく、参加する個人間でナレッジや経験を共有し合う「シェアを通じた切磋琢磨」により、お互いの事業を磨き合っています。

企業の中で戦いながら燃え尽きそうになっているイントレプレナーが孤独に陥らないように、そしてこれから取り組もうとしている人に、そうした人と触れ合う中で自分の心の灯を点すきっかけを、プログラムを通じて提供しています。



社内ベンチャー・ファンド

創業以来、一貫して雇用創造に取り組んできたパソナグループ。“雇用を創る”ことから“雇用を生み出す起業家を創造する”ことを使命に、社内ベンチャー・インキュベーションファンド『ニュー・バリュー・クリエーション・ファンド(以下NVCF)』を2013年に立ち上げました。
NVCFは、ベンチャーマインドをもった社員を発掘し、そのアイデアを具現化する重要な役割も担っています。起業意欲のある社員をアントレプレナー・イントレプレナーに育てるべく、人・資金・ノウハウ・モノの支援を行い、パソナグループのリソースを活かした新事業創造を積極的に進めています。

NVCFの一部で、東北の未来を創る起業家を輩出することを目的にした『東北未来戦略ファンド』を通じ、2015年4月に創業したのが東日本大震災の被災地の活性化を目指す 『株式会社パソナ東北創生』です。

社長を務める戸塚絵梨子は2009年にパソナに入社、震災をきっかけに社内の“ボランティア休職制度”を活用し、岩手県釜石市の団体で約9カ月間支援活動に従事しました。

復職後もグループ内でさまざまな東北支援の活動に携わってきましたが、「東北の地域課題と“ソトモノ”が持つ強みのマッチングを通して、人と事業がポジティブな連鎖で成長していく未来をつくりたい!」と自らNVCFに事業を提案。NVCF事務局が事業計画の作成をはじめ、会社設立、起業後のプロモーション、営業支援までをトータルにサポートしました。

現在は、全国の企業・大学を対象にした東北地域での「研修ツーリズム・滞在型研修事業」、そして東北の地域に眠る資源、アイデンティティを基にした地域の「事業・なりわい創造支援事業」に取り組んでいます



おわりに


労働力人口が減少し、テクノロジーが飛躍的に発展する現代において、企業が社会のそうした変化をチャンスに転換し、優秀な人材がイキイキと活躍する組織を創り上げるために、人事に何ができるのか―。
そうした問題意識のもと、5回わたってお届けしてきた連載企画「未来を創る人事」。いかがでしたでしょうか?

本連載では、一橋大学名誉教授 石倉洋子氏の「“力のある個人”が企業の競争優位の源泉となる」というキーノートを受け、企業人事が抱える課題への処方箋を、「多様な人材の活用」「AI・ロボット技術への対応」「スキルセットの展開と世界最適配置」、そして今回の「イノベーション人材の育成」という4つの視点から見てきました。

変化の激しい現代において、ひとつの解決策がこれから先も有効である保証はありません。しかし、本連載で検討した4つのテーマは、ある程度の普遍性をもって人事担当の方々に受け入れられるのではないでしょうか。
パソナグループはこれからも、企業経営者や人事担当者、そして働くすべての人と共に歩みながら、最適なソリューションを提供してまいります。

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