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HR 2017.01.20 労働契約法の2018年問題 有期契約社員の無期転換制度の対応ポイント

文:INITIATIVE編集部



2018年は労働契約法や労働者派遣法など雇用に関する法律により、企業にさまざまな対応が求められるため「2018年問題」と呼ばれています。そこで、労働契約法による有期契約社員の無期転換制度のポイントを、社会保険労務士法人みらいコンサルティングの社会保険労務士 藤崎和彦氏に伺いました。

(参考記事)「同一労働同一賃金」法改正のポイントと企業が準備すべきこととは

Q. 有期契約社員の無期転換制度の基本的なルールを教えてください。


この制度は、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたとき、社員が申込をすることで、期間の定めのない労働契約=無期労働契約に転換できるものです。通算5年を超えて締結(更新)された契約の期間内にいつでも申込ができ、申込んだ時点で契約成立となります。
このとき、会社側に拒否権はありません。ただし、申込からすぐに無期契約に切り替わるわけではなく、申込が行われた契約期間終了日の翌日、つまり次の契約更新のタイミングで無期契約となります。

対象となるのは、施行日である平成25(2013)年4月1日以降に開始した(または更新した)有期労働契約のため、1年を超える有期労働契約を除き最短で、平成30(2018)年4月1日を始期とする契約で無期転換の権利が発生します。

このように、無期転換の権利が発生する時期が迫っていることを踏まえると、早期に対策を検討する必要があるといえるでしょう。

なお、有期労働契約期間を通算しなくてよい「クーリング期間」も定められており、有期労働契約の間に契約のない空白期間が6カ月(有期労働契約が1年未満の場合はその契約期間に2分の1を乗じて得た期間)以上ある場合は、前後の有期労働契約を通算しないことになっています。
また、定年再雇用の場合と高度専門職の場合は、無期転換の対象から除外できる特別措置法による特例があります。


Q. 5年を超える労働契約を更新するかどうかは、どのように判断すべきですか?


判断基準になるのは「代替要員の確保の容易性」「有期契約社員が担当する業務の難易度」「有期契約社員が担当する業務の継続性」等で、職種や地域ごとに無期転換の方針を検討すべきです。
無期転換を推進する場合は、全員正社員化、新たな社員区分の設定、希望者のみ無期転換するといった方策が考えられます。

また、無期転換申込権を行使し、無期労働契約となった場合の労働条件は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一になります。
ここでいう「別段の定め」とは就業規則等のことを指し、あらかじめ無期転換後に適用する就業規則等を定めておくことで、期間の定め以外の労働条件を変更することが可能です。

現時点では「別段の定め」の範囲に関して明確な基準は出ていませんが、定年制度や配置転換、残業の有無などが考えられ、無期転換予定者が納得できるように丁寧な説明が求められます。

Q. 無期転換を行う場合、人事マネジメントではどのような注意が必要ですか?


無期転換後の人材活用としては「直前の有期労働契約と同一の労働条件を適用する」「新たな社員区分を設ける」「正社員へ登用する」の3つのコースが考えられ、これらを組み合わせて運用することも可能です。いずれの場合も、労務制度・人事制度・正社員登用制度・人材育成の方針を検討する必要があります。

特に人事制度に関しては、できるだけ導入すべきと考えます。これにより無期転換社員のモチベーションやパフォーマンスを高めることにつながります。
なお、労働条件を検討する場合は賃金水準や手当、賞与、退職金など、正社員との整合性が取れるように、同一労働同一賃金の視点で考えるべきです。また、評価制度については、正社員の人事評価制度よりもシンプルでわかりやすい内容のほうが運用しやすいため、管理職でない一般社員向けの評価シートを簡略化して使うなどが考えられます。

(参考記事)「同一労働同一賃金」法改正のポイントと企業が準備すべきこととは

前述のとおり、1年を超える有期労働契約を除き最短で、平成30年4月1日以降を始期とする有期雇用契約により無期転換申込権が生じることを鑑みると、遅くとも平成29年度中に無期転換の就業規則を策定し、説明会を行うなどの準備が必要です。
特に、長く有期雇用契約で働いていた人や、人事部を通さず現場の裁量で雇用していた人に対しては、丁寧な説明が求められるでしょう。


(2017年1月発行「HR VISION Vol.16」より)

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