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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

HR 2017.01.25 RPAによる生産性向上の新たなトレンド ~ 人とロボットのソリューション

文:INITIATIVE編集部

昨今、人事領域で大きく注目される「HR Tech」。オフィスにおけるロボット・ AIの活用や、人事分野でのビッグデータの活用は今後ますます拡大していくことが予想されます。今回は、業務効率の飛躍的向上を図るRPA(Robotic Process Automation)の可能性とそれを担う人材の育成について、日本RPA協会 代表理事 大角暢之氏と、パソナ 代表取締役社長COO スコット佐藤に聞きました。

(参考)パソナ「RPAエキスパート育成プログラム」


(左:パソナ スコット佐藤、右:日本RPA協会 大角暢之氏)

工場からオフィスに広がる「ロボット」


国内の労働力人口減少などに伴い、デジタル上の新しい労働力「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」を活用したRPA(Robotic Process Automation)に注目が集まっています。この分野で先駆的に取り組んできた大角暢之氏は「RPAは、日本が抱える『人手が足りない』という課題のダイレクトな解決策になり得る」と強調します。

「ロボットと聞くと二足歩行するものを思い浮かべがちですが、私たちは①人間の作業を代行できる、②能力が高い、③変化に強い、の3点を備えたものを“ロボット”と定義しています。デジタルレイバーは仮想の労働者ですが、人の約200倍の処理能力を持ち、24時間365日働き、仕事の内容が変わったときに少しのチューニングで対応できるといった特徴から、“ロボット”の定義に当てはまる存在と言えます」(大角氏)

このデジタルレイバーを活用したRPAは、今、日本で特徴的な進化を遂げています。

「アメリカでは多様な人種や文化の中で業務の標準化が進められてきたため、RPAは標準化された人間の作業をAIが学んでいく『機械学習』が中心です。またヨーロッパでは多くの国や言語があり、さまざまなシステムが混在しているので『上から蓋をしてシステムをつなごう』と考え、ERP(Enterprise Resources Planning=基幹系情報システム)という発想が重視されてきました。

一方、日本では『人の属人的な作業を代行する』という部分でデジタルレイバーが活用され始めています。これは製造業をイメージしてもらうとわかりやすいのですが、日本の製造業が戦後成長できたのは、“人間”と“機械”の間に“FA(Factory Automation)”という『人の作業を代行する層』を構築できたからです。人間と機械だけでは車を1台製造するのに1週間かかるけれど、FAが加わることで1時間で作れるようになる。

つまり、リードタイムと原価を圧縮し、品質を最大化できるわけです。工場のような直接部門ではこのような3層構造はすでに一般的ですが、間接部門ではいまだに“人間”と“IT”の2層のままということが多い。ですからその間に“人間を代行する層”としてデジタルレイバーが加われば、全業種、全業務で付加価値を生み出すことができると考えています」(大角氏)



日本型RPAの持つ可能性


「日本では、一つひとつの作業を人間が行うということにこだわりがありますよね。だから、現場に行くほど属人的な知恵やアイデアがたくさんある。この“属人的な作業”をどんどん代行させようというのが、日本型RPAの特徴です」(大角氏)

例えば旅行会社や通販事業などでは、競合の価格情報をWebサイト等で調査し、自社の販売価格を調整する作業が欠かせませんが、どの会社の動きに注目するかといった重みづけは担当者によって異なります。
こうした“勘所”や“独自のロジック”をデジタルレイバーに記録し代行させ、必要に応じて通知させれば、迅速な判断と対応が可能になります。

「大量に情報を処理する保険会社や銀行、自治体の給付金処理業務などでもデジタルレイバーの導入が進んでいます。一度導入すると、退職することがないためリクルーティングが不要になるのと、圧倒的な業務処理スピードを実現するため、どんどん属人的な作業を任せたくなるという反響が多いですね。現場がデジタルレイバーに『ロボ美ちゃん』などの名前をつけて、一緒に楽しく働く存在と受け止めている。これは日本ならではのよさだと思います」(大角氏)

しかし、先進的な企業が積極的な導入を進める一方で、パソナの佐藤は「全体的には日本はまだ遅れている」と捉えています。
「日本は“ミスやエラーを認めない文化”が強いので、『ロボットより人間がやったほうが安全だ』と考える人がまだ多いのではないでしょうか。しかし、ロボットの導入は人の採用と同じです。新しく採用した人が現場で試行錯誤を繰り返しながら日々成長していくように、ロボットもまず導入してみて、小さな仕事から試してみる。そうやって最初のハードルを越えることが大切です」(佐藤)



「ロボット」をHRの観点で捉える


こうした観点で捉えると「RPAはHRに近い分野だ」と大角氏は考えています。
「デジタルレイバーを導入する環境を整え、マネジメントしていく上では、人材業界に大きな期待をしています。ロボットだけではうまく仕事はできません。10の仕事のうち1から3までをロボットが行い、4から5を人間がやり、それ以降はまたロボットに任せるというように、人とロボットが一緒に働いていく“パッケージ”が必要です」(大角氏)

「パソナグループでも、人とロボットをミックスしたソリューションの開発・提供を進めています。しかし、ロボット導入の前提となる“デジタル化”が必要な企業が多いのが現実です。
例えば、これまで紙で管理していた勤怠管理シートや契約書をデジタルで処理したり、コールセンターや営業など複数のチャネルに寄せられる顧客からの質問を一つのデータベースに集約するなどです。デジタル化されているからこそ、ロボットが働けるようになる。ですから、活用の仕方は後から検討するとしても、データを揃える作業はどの企業も早めに着手したほうがよいでしょう」(佐藤)

また、RPAが拡大していくためには、それを担う人材の育成も不可欠です。
「この分野では、新しいことにチャレンジして試していこうという、いわば“メンタルのスキル”が重要です。テクノロジーを使って自分の業務をどう変えていくかを考えられる人に活躍のチャンスがあります」(佐藤)

「若い人ほど新しいテクノロジーに対する適応力があるため、日本RPA協会では『行政・アカデミア分科会』を設立して、大学・高校・高専・専門学校などでのRPA教育の支援を開始しています。もちろん、おもしろいと思うものにチャレンジできる“意識の若さ”があれば、年齢に関係なくロボットの仕事になじめるでしょう」(大角氏)

人とロボットがともに働くことで、業務や経営を変革し、人のよりよい働き方にも影響を与える日本型RPA。その進化と拡大に、今後ますます期待が高まります。



(2017年1月発行「HR VISION Vol.16」より)

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