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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

イベント 2018.06.29 パソナ国際交流プログラム30周年記念シンポジウム 「グローバル化に向けた日本の『意識改革』」【後編】

文:INITIATIVE編集部

国際相互理解の促進とグローバル人材の育成を目指して、パソナグループが1988年に開始した「パソナ国際交流プログラム」は、アメリカやアジア各国の学生を日本に招聘し、日本企業でインターンシップを行うプログラムです。このたび、30周年を記念してシンポジウムを開催し、グローバルに活躍する人材を育むための「社会のあり方」について多角的に議論を深めました。
今回は【前編】に引き続き、パネルディスカッション「真のグローバル人材が実現する『社会のあり方改革』」の模様をお届けします。



[パネリスト]
・ジェラルド・カーティス 氏(コロンビア大学 名誉教授)
・黒川 清 氏(東京大学・政策研究大学院大学 名誉教授)
・正宗 エリザベス 氏 (淡路ユースフェデレーション 専務理事)
[モデレーター]
・竹中平蔵(株式会社パソナグループ 取締役会長)

【前編はこちら】

リスクをとる重要性


竹中:

調講演でカーティス先生から提起された日本に対する問題意識を受けて、どのようにお感じになられましたか?

黒川:
日本の大学で「私は研究者だ」という教授はいても、「私は教育者だ」と言える人はほとんどいません。講義をして教えているつもりかもしれないけれど、大切なのは次の世代への想いです。カーティス先生ご自身が「自分は教育者」だと断言できるからこそ持てる問題意識だと感じました。



正宗:
日本人は失敗を恐れるという指摘が当たっていると思いました。夢は持っていても、一人のグローバル市民として自由に自分の将来をつくっていけるとは信じていない。「一年間自由にどこかへ行って様々な経験をしてきたら、自分は成長できる」というような考えを持つのが難しい環境に置かれている。日本では、個人はもちろん、社会も企業も同時に変わらなければならないと私は思います。

竹中:
社会のあり方と意識の関係を考えていくとき、「上部構造=私たちの意識」と「下部構造=社会の構造=経済や法律」との結びつきの話をよくします。失敗を恐れる理由は、日本の破産法制の厳しさに結びついています。アメリカでは破産=リセットですから、1回失敗してもやり直すことができる。しかし日本で破産したら、その後みじめで大変な状況になります。
つまり、破産の制度と日本人の意識が結び付いているということです。もちろん、それでもチャレンジする人はいるので、意識は大事です。制度と意識の相互関係が議論されるべきでしょう。

カーティス:
どの国でもリスクへの恐れはありますが、例えばアメリカでは、社長をはじめトップが、リスクをとろうとする人を評価します。日本では社会構造として、言われたことをしてもらいたいという考えが強い。ですから「個人がもっとリスクをとりなさい、リスクをとれば損しない」という意識が経営者たちに生じるかどうかがカギです。


グローバル化は個人の課題ではなく、社会全体の課題


竹中:
カーティス先生の話で大学教授の評価についての例がありましたが、大学改革についてはどうお考えですか?

黒川:
大学教育の課題にも、年功序列で閉鎖された社会構造が大きくかかわっています。加えて、外に開かれていないのが最大の課題です。東大の入学式でも学生に向けて話しましたが、「1週間でも2週間でもいいから、とにかく海外に行け」と。自分が日本では考えないようなこと、とんでもない世の中だと感じることに出会ってみなさいと。実体験のないことをいくら考えても、わからないものです。それを、SNSやネットの情報でわかった気になっているのが、日本の「勉強」なのです。今の時代、若者は特に、お互いの信頼と行動によって、世界中に友達を増やすことができます。それはとても大事なことです。
それから、わかった気になるということで言うと、今は「クリティカルシンキング」のようなカタカナで考えていますよね。これをアルファベットで考えられるかということは非常に大きな違いだと思います。

竹中:
基調講演でショッキングだったのは、留学生の数についての事実です。日本人の留学はなぜ減少していて、どうしたらこの状況を変えられるのでしょうか。



正宗:
人は本来、自分で責任を負って自分のキャリアをつくっていかなければなりませんが、それにはリスクも伴います。日本では、大学で海外に留学したとしても、失敗できない。会社に入って年功序列制度に身を託すと、もう失敗できない。それなら、居心地のいい日本に暮らし、あまりチャレンジしなくてもよい環境で生きていこうと考えてしまうのは当然だと思います。
また、日本人は強い団結力を持っていますが、これがマイナスに働くと海外に出るのが怖いということにもなります。

カーティス:
これは社会の問題であって、若者個人だけの問題ではないのです。「グローバル人材」という言葉にこだわらず、日本人みんなで真剣に考えて、若者がチャレンジできる環境をつくり、未来の日本をより良くするために、具体的に何をすればいいのかを考えるべきだということが、今日の私たちの結論ではないでしょうか。

竹中:
日本の社会のあり方を取り巻く課題は非常に根深く、今回のパネルディスカッションをキックオフとして、さらなる議論を重ねていければと思っています。ありがとうございました。
 

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