(本社:東京都千代田区、代表取締役グループ代表 南部靖之)は、日本、アメリカ、カナダ、香港、韓国、台湾、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インドの12カ国・地域にある日系企業を対象に、『“大離職時代”の企業活動への影響に関する調査』を実施いたしました。
コロナ禍を経て、働く人の仕事に対する価値観や会社に期待することなど、労働を取り巻く環境や意識が大きく変化する中、アメリカでは「大離職時代(Great Resignation)」が到来し、企業活動に大きな影響を及ぼすと言われています。
そこでパソナグループでは、日本を含む各国・地域において「大離職時代」がどのように企業に影響をもたらしているのか、コロナ禍以前と以降の従業員の仕事に対する価値観の変化や離職状況などを調査し、821社の回答の結果を分析して傾向をまとめました。
調査結果のポイント
■ コロナ禍で仕事に対する価値観などが「変化した」が約8割。変化を感じた項目は、「勤務形態に対する要望」が82%。
■ 従業員の仕事に対する価値観や会社への要望の変化は、業績に対して「プラスの影響」と「マイナスの影響」が拮抗。
■ コロナ前に比べ、39%の企業が「離職者が増加」と回答。特に若年層や入社年数が浅い層で増加傾向が大きい。
■ 直近一年では、コロナ前に比べて「働き方」を理由に離職するケースが11ポイント上昇。企業はコロナ禍によって多様化する「働き方」に対する柔軟な対応が求められる。
■ 7割がコロナ前に比べて人材マネジメントの難化を感じている。難しく感じる点は、多くの国で「モチベーションの維持」、次いで「仕事や働き方の変化」。
■「大離職時代」への対策は、給与テーブルの見直し・昇給や、在宅勤務に適したシステムの導入など、企業側が従業員に寄り添う姿勢が顕著に。
調査概要
調査主体 |
株式会社パソナグループ |
調査対象 |
日系企業のグローバル人事担当者、現地法人人事担当者 等
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調査方法 |
オンライン調査 |
調査地域 |
日本、アメリカ、カナダ、香港、台湾、韓国、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポール、インドネシア、インド 計12カ国・地域
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有効回答 |
821社(日本120社、アメリカ179社、カナダ15社、香港57社、台湾91社、韓国18社、タイ66社、ベトナム44社、マレーシア16社、シンガポール101社、インドネシア44社、インド61社、その他9社)
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実施期間 |
2022年8月5日~16日
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調査言語 |
日本語、英語 |
■コロナ禍で仕事に対する価値観などが「変化した」が約8割。変化を感じた項目は、「勤務形態に対する要望」が82%に上り、在宅勤務の普及が影響したと推察される。
コロナ禍で従業員の仕事に対する価値観などが変化したかという質問に対し、全体の79%が「変化した」と回答し、続いて、どの項目で従業員の変化を感じているかという質問では、「勤務形態に対する要望」という回答が82%に上り、コロナ禍を経て在宅勤務が普及したことなどが大きく影響していると考えられます。
Q1. コロナ禍を経て、従業員の仕事に対する価値観や会社への要望・期待が以前と比べ変化していると思いますか。(有効回答数=819)
Q2. 具体的にどの項目で従業員の変化を感じていますか。(Q1で「変化した」を選択した回答者、有効回答数=638、複数回答)
■従業員の仕事に対する価値観や会社への要望の変化は、業績に対して「プラスの影響」と「マイナスの影響」が拮抗。
コロナ禍前後における従業員の仕事に対する価値観や会社への要望・期待などの変化が、企業業績に影響を及ぼすかという質問には、「プラスの影響」が26%、「マイナスの影響」が29%となりました。国別ではタイで「マイナスの影響」が51%と突出する結果となりました。これは、従来盛んだった観光産業がコロナ禍で不振となったことで、従業員の企業からの自立に向けた意識、ひいては企業への帰属意識に影響を与えており、各企業で業績にも悪影響を与えると見込んでいるようです。
一方、全体の37%の企業は「(影響を及ぼすか)わからない」と回答しており、世界の経済活動がコロナ禍以前に完全には戻っていない中、従業員の変化が業績に影響を与えるかについて判断がつかない企業も多い現状にあります。
Q3. 上記の変化は業績に影響を及ぼすと思いますか?(有効回答数=638)
■コロナ前に比べ、39%の企業が「離職者が増加」と回答。特に若年層や入社年数が浅い層で増加傾向が大きい。
コロナ前と直近を比較すると、全体の39%が「離職者が増加」したと回答しました。特に「増加」が多かったマレーシアでは、主に半導体業界をはじめとする慢性的な人材不足で企業の採用活動が活発化し、同時にコロナ禍におけるオンライン面接の普及が転職意欲を喚起していると考えられます。またカナダは在宅勤務などの勤務形態への要望が強まったことが増加の理由と推察されます。
さらに、離職者の状況を階層別に聞いたところ、組織階層が下位レベルの従業員、入社年次が若い従業員ほど、「増加」が大きい結果となりました。日本における増加傾向は、終身雇用という概念が薄れ、特に若年層で転職によるキャリアアップやスキルアップを志向する傾向が広まっていることが大きな理由になっていると推察されます。
Q4. コロナ前と比較して直近の離職者数は増加しましたか、減少しましたか。(有効回答数=761、単回答)
Q5. それぞれのキャリアレベルで、コロナ前と比較して直近の離職は増えましたか、減りましたか?(有効回答数=750 ※該当社員がいない企業を除く、単回答)
Q6. それぞれの勤続年数層において、コロナ前と比較して直近の離職は増えましたか、減りましたか?(有効回答数=714 ※該当社員がいない企業を除く、単回答)
■直近一年では、コロナ前に比べて「働き方」を理由に離職するケースが11ポイント上昇。企業はコロナ禍によって多様化する「働き方」への柔軟な対応が求められる。
コロナ前と直近1年の離職理由の上位3つを聞いたところ、「働き方」を理由に離職するケースが11ポイント上昇しました。コロナ禍によってリモートワークや在宅勤務が普及し、場所にとらわれない働き方を求める従業員が増えたことが背景にあると考えられます。
従業員は、通勤時間の効率的な活用や、家族との時間を大切にしたいなどを理由に、柔軟な働き方を実現できる企業での就業を望む傾向にあり、企業は在宅勤務の体制整備や、フレックスタイム制の導入などの対応が必要となってきています。
Q7. 離職理由トップ3をお選びください。(上段/コロナ前、下段/直近12か月)(有効回答数=上段652/下段612 ※離職者がいない企業は除く、上位3つを回答)
■7割がコロナ前に比べて人材マネジメントの難化を感じている。難しく感じる点は、多くの国で「モチベーションの維持」、次いで「仕事や働き方の変化」。
全体の7割に及ぶ企業が、コロナ前と比較して人材マネジメントに難しさを感じるようになり、特に 日本とマレーシア、アメリカでは8割超に上りました。コロナ禍により多くの企業でリモートワークの 導入が加速し、企業は従業員それぞれの希望に合った柔軟な働き方を容認しつつも、コミュニケーション不足などが課題として残りました。コロナ以前は対面で行っていた従業員への日々の声掛けや短時間の面談などが気軽に実施しにくくなったことなどから、特に社員のモチベーション維持に難しさを感じていると推察されます。
また、前出のQ4で約4割の企業が「離職者が増加」したと回答している通り、仕事や働き方に対する価値観の変化が、企業への帰属意識や人材の定着にも影響を与えていることがわかります。
Q8. 人材マネジメントにおいて、コロナ前と比較して難しさを感じている点はありますか。(有効回答数=761、単回答)
Q9. 前問で「はい」と答えた方に伺います。具体的にどのような難しさを感じていますか。(有効回答数=533、複数回答)
■「大離職時代」への対策は、給与テーブルの見直しや昇給、在宅勤務に適したシステムの導入など、企業側が従業員に寄り添う姿勢が顕著に。
「大離職時代」に対する今後の対策を聞いたところ、「特に対策はしていない」という回答は9%にとどまり、多くの企業で現状の人材マネジメントに危機感を持ち、人材流動の活発化に備えて制度の見直しや就労環境の整備などを検討している様子が見てとれます。
給与テーブルの見直し・昇給や、在宅勤務に向けた設備投資など、多くの企業で従業員の満足度向上に繋がる投資に意識が向いていることがわかりました。
Q10. 「大離職時代」に対して、今後どのような対策を検討されていますか。(有効回答数=754、複数回答可)