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環境だより「SONAERU」

今こそ振り返る! 環境問題のトレンドと“COP”とは

2022年も1年間で様々な環境問題が取り上げられてきました。2023年を迎えるにあたり、今こそ振り返るべき世界の環境分野のトレンドの変化と、知っておきたい“COP”について、環境委員会のメンバーでもある、キャプラン 石田 正則社長にインタビューしました。

世界の有識者が注目する環境問題

今年1年間を振り返ってみると、世界で様々な環境問題が発生しましたね

はい。世界各国で様々な環境問題が発生しましたが、“異常気象” というワードがよく取り上げられました。具体的にどのようなことが発生したか、皆さんは覚えていますか。今年1年間に起きた世界の異常気象について、写真と共に振り返ってみましょう。

3月:インド
インドでは、3月中旬から熱波に見舞われ記録的な干ばつが発生。5月中旬頃には、北西部において50度近い気温を観測しました。

6月:日本
東京では、6月25日から9日連続で35℃を超す猛暑日を記録。これは、観測史上最長となりました。
また、東京以外に高知県、愛知県、岐阜県でも35℃を超える猛暑日が続きました。

7月:オーストラリア
シドニーでは、4日間で800ミリの雨が降り、今年3度目となる大洪水が発生。
一部の食料生産地域が浸水し、野菜や果物などにも深刻な被害を及ぼしました。

8月:アメリカ
カリフォルニア州北部で発生した森林火災は、225平方キロメートルに広がり、周辺地域に非常事態が宣言され、住民に避難命令が出されました。

参考:グリーンピース・ジャパン
https://www.greenpeace.org/japan/sustainable/story/2022/07/15/58315/

これらの異常気象は、やはり地球温暖化の影響なのでしょうか

1830年以降、世界の平均気温は上昇し続けており、これが異常気象の原因の一つになっていると言われています。国連の世界気象機関(WMO)は、このまま対策をとらなければ2026年までの5年間で、世界の平均気温が一時的にも産業革命前に比べ1.5℃上昇する可能性があると発表しています。

地球の平均気温が上昇していると言われてもなかなか身近に感じられないかもしれませんが、人間のような高い温度適応能力を備えていない生物にとって、1.5℃の気温変化は生命を揺るがす大きなものです。

今後地球の温度が上昇し続けた場合、地球の自然、海に住む魚、森に住む動物たちはどうなっていくのかー。今から環境問題を少しずつ自分事に捉え、共に地球で生きる生物の未来までイメージしていくことが大切です。

様々な環境問題が発生している中で、世界の意識はどのように変化していますか

皆さん、「ダボス会議」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ダボス会議を開催している「世界経済フォーラム」が発表した、2022年のグローバルリスクにおいて、上位3つを占めたのが「環境問題」です。経済、政治、学術研究など、様々な分野における世界中のリーダーたちが、それだけ環境問題に対して危機感を持っています。

参考:WORLD ECONOMIC FORUM「グローバルリスク報告書2022年版」
https://jp.weforum.org/press/2022/01/jp-climate-failure-and-social-crisis-top-global-risks-2022/

このような状況において今特に注目されているのが、気候変動対策に向けた「カーボンニュートラル経営」、生物多様性の対策に向けた「ネイチャーポジティブ経営」です。このような環境問題への取り組みが、企業をはじめ社会全体で求められています。

今年11月には気候変動について考える「COP27」がエジプトで、12月には生物多様性について考える「COP15」がカナダで開催されましたが、こうした環境問題に対する国際的な取り組みは、実は約30年前から世界で進められていました。

今年も世界で開催される“COP”。自分の言葉で説明できますか?

“COP”について、改めて解説していただけますか

1960年代以降、世界の環境問題への取り組みが本格的にスタートし、1992年に「地球サミット(国連環境開発会議)」が開催されました。そこで決定したのが以下の5点です。

環境と開発に関するリオ宣言:ストックホルム宣言を再確認・発展させるための27原則
アジェンダ21:持続可能な開発実現のための人類行動計画
森林原則声明:森林問題初の合意
国連気候変動枠組条約:気候変動の緩和や適応に関する決定
生物多様性条約:生物多様性の包括的な保全と持続可能な利用促進

この地球サミットで、各国が「国連気候変動枠組条約」「生物多様性条約」への署名を開始しました。そして、それぞれの具体的な政策を議論する場として開始したのが、「COP(Conference of Parties:締結国)会議」です。

気候変動は生物多様性損失の5大要因のひとつで、国際的な気候関連議論においても生物多様性への配慮が大きく取り上げられています。気候変動と生物多様性の損失は表裏一体といわれており、両課題への解決策が強く求められています。

気候変動について討論した今年の「COP27」で、注目すべきポイントはどこでしょうか

これまでの会議では主にルール形成に主観を置いていましたが、今年11月に行われた「COP27」では、目標達成に向けた具体的な対応策について話し合われました。

そして今回特に注目されたのが、発展途上国に対する「損失と損害」に対する基金の設立です。近年、地球温暖化などによる異常気象などで様々な災害が発生し、インフラが整っていない発展途上国では大きな被害を受けています。

一方で、温室効果ガスを排出しながら経済発展を遂げてきたといわれている先進国は、発展途上国の復興への支援に関するルールがありませんでした。そこで、発展途上国の「損失と損害」に対する基金の設立で、今後は各国が明確にサポートしていく方向で合意しました。今回のCOP27で決定した基金の運用については、2023年のCOP28などにおいて検討、採択されます。

■今後の日本に求められる“気候変動”の3つの取り組み
「目標・実行」:CO2削減目標の設定と実行に向けた管理を行う
「情報開示」:積極的な情報開示を行いステークホルダーとの対話を行う
「協働・実行」:様々な企業と連携し環境問題への取り組みを推進させていく

生物多様性について討論した「COP15」で、注目すべきポイントはどこでしょうか

私たちが生きていくうえでは、様々な動物や虫、菌類などの微生物、植物など、地球上に生息する様々な生物に依存し支えられています。これらの多様な生物との繋がりは、直接目に見えないものですが、実は私たちの生活のいたるところで恩恵を受けていることを認識することが大切です。

今年12月に開催された「COP15」では、多くの企業や金融機関などが参加し、過去最大規模となりました。2021年6月に自然関連財務情報開示タスクフォース「TNFD」が正式に発足し、企業は今後、事業活動における自然への依存度と影響を評価して開示することが求められるため、生物多様性に関する世界中の注目度が高まったとされています。

そして、今回特に注目すべきテーマは「30by30」。これは、「2030年までに生物多様性の損失を食い止め、 回復させる」(ネイチャーポジティブ)というゴールに向けて、2030年までに陸と海、それぞれの保護環境を30%以上作っていくことを掲げた目標です。

参考:A Global Goal for Nature: Nature Positive by 2030
https://www.naturepositive.org/

保護環境が注目されている理由として自然(生物多様性)の減少が挙げられています。国際環境NGOのWWFジャパンの調査によると、1970年から50年間で69%の自然が減少しています。

参考:WWFジャパン『生きている地球レポート2022』
https://www.wwf.or.jp/activities/lib/5153.html

気候変動によって様々な災害が発生していますが、その被害を被っているのは私たち人間だけでなく共に生きる自然も同様です。地球温暖化の影響で、これまでにないスピードで野生生物の種の絶滅が進んでいます。

また、全体の生物の減少率は69%ですが、エリア別に見てみると中南米では94%、アフリカでは66%と、特に発展途上国における減少率が大きくなっています。

参考:WWFジャパン『生きている地球レポート2022』
https://www.wwf.or.jp/activities/lib/5153.html

▲エリア別で見る生物の減少率。エリア別に見ると、発展途上国の減少率が大きい

先進国の特に都市地域には建物が多く生物と触れ合う機会が少ないため、なかなか実感が沸かないかもしれません。しかし、自然とより近い環境で生活している発展途上国では、日々たくさんの自然が失われており、毎日の生活を揺るがす深刻な問題となっています。

先ほどの気候変動と同様に、これらの環境の変化を私たち一人ひとりが知り自分事として捉え、そして行動に移していくことが大切です。

今後の日本に求められる“生物多様性”の3つの取り組み

「30by30」:2030年までに陸と海の30%を保全エリアとする
「ビジネスプロセス・サプライチェーンの強化」:生物多様性の保全につながる活動をサプライチェーン全体で取り組む
「自然関連の企業情報開示」:積極的なTNFD(自然関連財務情報開示)を行う

2023年、私たちが求められる変化

今後、パソナグループに求められることは何でしょうか

私たちは今後、環境問題への取り組みにおける明確な目標設定を行い、その取り組み状況について情報開示を積極的に行っていくことが求められます。まず初めの一歩として、事業活動におけるプロセスと、そこに関係するパートナー企業それぞれの自然との関わり方を認識し、今後の指標にしていきましょう。

事業活動のみならず個人においても、まずは自身が働くエリアと自然との関わり方について興味を持ってみてください。毎日通っているオフィスが建つ前、その地域にはどのような動物、虫、自然が存在していたのか。そのうえで、今仕事をしている環境と自然との関わり方、そして仕事が自然に与える影響について知り、一人ひとりの視点で環境問題への意識を高め目標を持って行動に移していくことが大切です。

パソナグループの強みは何でしょうか。

近年「人的資本経営」が注目されていますが、今後は仕事の側面だけではなく、プライベートや社会との関り方など、様々な側面での経験も含めた人材の育成と評価が求められます。

パソナグループでは、地方創生事業や社会貢献活動を数多く行っており、会社全体の事業活動を通じて自然と環境問題について触れる機会があります。一般的な企業において、これらはプライベートの側面としても捉えられがちですが、私たちパソナグループではそれを、「社会の問題点を解決する」ための一つの事業活動として捉えています。

つまり、働きながら自然と環境問題について触れ、解決に向けた取り組みをすることができる環境にあることー。これこそが、パソナグループの一つの大きな強みだと感じています。

皆さんに伝えたいメッセージをお願いします。

まずは知ること。そして、事実を知ったうえで実体験をすること。この両輪を回すことが大切です。

パソナグループでは、日々様々な環境保全活動を行っていますが、次のステップとして単に活動を行うだけではなく、その地域にどのような自然が存在しており、私たちの毎日の生活が動植物にどのような影響を与えるか考えてみる。また、その地域の歴史に詳しい人に、地域の環境の変化を聞いてみて、どのような環境変化が生じたのか知ってみる。このように、まずは身近な地域の動植物のことについて知るという、プラスアルファの行動にチャレンジしてみてください。

そうすると、人類が地球生態系の一員として他の生物と共存していることを改めて実感できると思います。この一人ひとりのプラスアルファの行動が生物多様性への意識を高め、私たちパソナグループの環境保全活動の可能性を広げていくのではないでしょうか。