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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

HR 2016.02.24 シリーズ 人を活かす「健康経営」(5)
健康経営につながる組織風土づくりの指針「良い会社サーベイ」

文:パソナキャリアカンパニー

健康経営の重要なファクターのひとつに、組織風土が挙げられます。ここでは、自社がどのような状態にあるかを理解するための「企業の健康診断」として「良い会社サーベイ」の特徴や活用法についてご説明します。


「良い会社」を深く学んでサーベイを開発


パソナキャリアカンパニーでは、2010年ごろから、自社をより「良い会社」にしていくことを目的に、様々な企業への訪問や勉強会、フォーラムなどを通じて社内外で企業風土に関する研究を重ねてきました。その活動を通じて、「社員がイキイキと働いて顧客満足・業績を向上させている会社」にこそ「良い会社」の要素が詰まっていると考え、現在まで自社の制度や企業風土の改革に取り組んできました。

そんな中、2012年に『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズの著者である法政大学大学院 政策創造研究科 坂本光司教授との出会いをきっかけに、「良い会社に共通した特徴」を抽出することを目的とした産学共同研究を開始。企業への実地調査を行い、「高業績」と「働く幸せ」の関連性などの考察を重ねました。そして、坂本研究室の推薦する「社員を中心にした関わる全ての人を幸せにする」会社を中心に、約180社・約4万人の調査を実施し、その結果を「良い会社データベース」にまとめました。

こうした共同研究の成果をベースとして、無記名式社員意識調査である「良い会社サーベイ」を開発、2013年9月より有償提供を開始し、90社に活用いただいています。

このサーベイでは、「良い会社要件」に基づいて7カテゴリー・77設問の標準設問を設定し、サーベイ実施企業と「良い会社」とのギャップを明確にします。自社の組織や働き方に関連する設問だけでなく、「働く幸せ」の重要なファクターである「顧客」「地域・社会」とのかかわりに関する内容も含み、総合的な調査を行うことができるようになっています。

また「良い会社データベース」に基づいた偏差値を提供することで、他社と比較した自社の位置づけ、強みや弱みを発見することができるのも特徴です。

■「良い会社サーベイ」を構成する7つのカテゴリー
 

課題を明確化・数値化して多様な分析が可能に


企業がサーベイの導入を検討する際には、経営層が気づいていない潜在的な問題がある場合と、すでに仮説のある課題を検証して社内のコンセンサスをとりたい場合があり、それぞれに応じて設問を設計する必要があります。

前者は「問題発見型」で、「良い会社サーベイ」の標準設問で社員の意識を総合的に調査することで課題を分析します。後者は「課題検証型」で、例えば評価制度や人材育成、上司との関係など、それぞれの企業が課題と感じていることを、標準設問より細かい内容に落とし込んだ設問を追加することで検証します。
オプションで提供している「課題分析報告書」ではスコアの低かったテーマの課題を抽出し、課題の構造化を行うとともに、どのような体制・アプローチで改善していくべきかの提案も行っています。

「良い会社サーベイ」
は企業の大小や業種を問わず実施でき、部署単位などでの分析も可能です。例えば製造業では、営業部門、開発部門、製造部門などによってモチベーションの源泉がそれぞれ異なるため、タイプに分けて課題を把握するといった使い方が考えられます。

また、データベースには多様な企業のデータを蓄積しており、同業種だけでなく他業種との比較もできるため、多面的な分析を行うことができます。

■導入事例のご紹介

  製造業 東証1部上場(約2,000名) 卸売業 東証1部上場グループ会社(約750名)
目的 中期経営計画(中計)初年度の開始にあたり、全社意識の把握および中計KPIの設定 積極的に推進する新規事業と既存卸売部門、若手層と中高年層の、意識ギャップの把握と改善
成果 経営テーマ(挑戦できる組織風土等)ごとの相関要因や、開発・生産部門を中心にした組織・人事課題(働きがい)を踏まえて人事制度などを変革し、経年で定点観測  既存事業や若手層での成長実感の低下が明確化し、社内ローテーションを実施。翌年、調査の再実施を経営陣が明言。部門長による自発的改善活動の促進

「良い会社」を社会に広めていくために


このように共同研究やサーベイを重ねる中で、業種や業態の違いを超えた「良い会社」の本質と言えるものがわかってきました。

ひとつは、「良い会社」では「人の役に立っているか」という設問に対するスコアが高いことです。この項目と高い相関を示すのが「顧客志向性」で、特にエンドユーザーを意識して仕事をすることや、口コミやリピートを意識し継続性のある仕事ができることによって人から必要とされていると実感することが重要だと考えられます。

また「経営の方向性」も重要です。企業のビジョンや「何のためにこの仕事をしているか」を社員が理解していることも「良い会社」の本質です。

一方「労働時間」「福利厚生」と「働く幸せ」には、あまり相関が見られません。こうした衛生要因はあるレベルまでは必要なものですが、一定以上では影響が少なくなるのではないかと見られています。

このようにサーベイの結果を活用することで、企業の抱える課題を定量的かつ明確に「見える化」することができます。すると、経営層や部門ごとのコンセンサスを得やすくなり、対策への落とし込みもより具体的なものにすることができると考えられます。

さらに、サーベイを中期経営計画といったPDCAに組み込むと、より効果的です。まず、課題を抽出し、KPIを設定するためにサーベイを実施します。その結果明らかになった課題に対して対策を打つことで、社内に変化が起こります。打った手が効果的だったか、思ったような成果を生んだかどうか、うまくいかなかったのはどんな部分かを把握するために継続的にサーベイを行うことで、さらなる改善につなげていくというサイクルを回すことができるようになります。

おわりに


「良い会社サーベイ」はサービス提供から2年が経ちましたが、設問の精度を上げるために常に改善を行っており、今後さらに多くの民間企業や団体等に活用していただければと考えています。
また、「良い会社」の好事例やスコアの特徴などを公開できれば、多くの企業が自社の改善を行う際に参考になります。それがさらには、企業が「健康経営」を進めるうえでの一助にもなるでしょう。さらに、「良い会社」の情報を幅広く提供することで、就労や定着支援にもつながると考えています。

これからも、「良い会社」の存在を広く社会に知らしめ、働く人一人ひとりがイキイキと働く社会の実現につなげていきたいと考えています。

(2016年1月発行「HR VISION vol.14」より)

バックナンバー:シリーズ 人を活かす「健康経営」

  1. 人材こそ資本であり生産性向上のカギとなる <前編>
  2. 人材こそ資本であり生産性向上のカギとなる <後編>
  3. 先進企業の「健康経営」実践ポイント<前編>
  4. 先進企業の「健康経営」実践ポイント<後編>
  5. 健康経営につながる組織風土づくりの指針「良い会社サーベイ」
  6. 中小企業の健康経営を支えるヘルスケアソリューション

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