株式会社パソナグループは、メタバース・Web3を活用した地方創生の取り組みや新しい働き方をテーマに、『Web3シンポジウム ~デジタルと共存できるか?地方×メタバース~』を1月27日(金)に、リアルとオンラインによるハイブリッドで開催しました。
今回は
【前編】に引き続き、シンポジウム後半の様子をお届けします。
第2部「地域に根差したデジタル」
<モデレーター>
株式会社パソナ X-TECHエンジニアマネジメント室長 平野恭祐
<登壇者>
合同会社VUIKU Director 須田隆太朗_氏
株式会社UniCask 共同創業者 クリス・ダイ_氏(オンラインで参加)
Q1.地方がデジタルを活用する必要性はあるのでしょうか
須田氏:
地方では特に人手不足を背景に、デジタル化なしにはどうしようもない状況であると思います。例えば介護現場では、デジタル化によって解決できることがたくさんあるのにも関わらず、いまだに介護現場の方々向けの使いやすいツールは圧倒的に少ないと実感しています。
私たちは実際に、飛騨高山の介護事業所さんと提携し、介護の現場をデジタル化する実証実験を行っています。現場の方々へヒアリングしてみると、単にデジタル化による業務の効率化以上に、人と人とがコミュニケーションを取れるようなサービスこそ、医療・介護の現場におけるデジタル化の本質的な価値であると痛感しています。
クリス氏:
新しいデジタル技術を活用することで、地方経済が盛り上がっていくでしょう。地方で埋もれている多くの素晴らしい商品こそ、デジタル技術(Web3やNFT)を駆使して、国内外のファンを巻き込んだ口コミなどの宣伝モデルが、これからさらに広がっていくのではないかと思っています。
現在、ウイスキーとNFTを組み合わせることによって、海外のお客様が日本に来られなくても、NFTを介した所有権を購入して、小樽を所有することができる仕組みを構築しています。そして5~10年後には、瓶詰めされたウイスキーをNFTの所有者にお届けすることができるんです。
平野氏:
デジタルの本質をきちんと理解したうえで、社会実装するための人材が必要です。人材ビジネスにおいても同様に、各地域でデジタルに精通した人材を育成することはもちろんのこと、地域内にとどまらず地域を超えてデジタル人たちが積極的にコミュニケーションを取り、一緒に伴走し合える仕組みが今後は重要になっていくと思います。
Q2.地方に新規提案するうえで心がけていることは何ですか?
クリス氏:
デジタル技術ありきではなく、地方の抱える様々な課題をどのように解決するかが重要だと思います。全ての問題をデジタルが解決できるわけではないため、問題点とそれに基づく解決策をしっかりと考えた先に、具体的な手段(デジタル技術等)を検討することが大切です。現在、空き家を活用した民泊とNFTと紐づけたサービスを展開しており、NFT所有者のコミュニティを活かして管理・運営を行い、地方の活性化に貢献しています。
須田氏:
私たちがいつもと違う地域に入っていくことは、その地域の何かを壊しているという感覚を持つことがすごく大事だと思います。実際に、介護分野のデジタル化に向けて介護事業所の皆さんの時間や労力をいただいた挙句、結果として何も生まれなかったということもあり得ます。懐疑的な気持ちで私たちが見られているということも、常に考えて行動しなければならず、その地域の人々と向き合う上での誠実さも重要であると実感しています。
平野氏:
地域の方とのコミュニケーションによる信頼関係の構築が何より重要ですよね。また、提案内容に関しては技術を最優先することなく、現場の課題に向き合い、どうすれば地域の方にとってプラスになるのかを考えるようにしています。
Q3.地域と外部の方々コミュニケーションを促進するための重要な要素とは
クリス氏:
地域と外部の方々が長期的なコミュニケーションを取っていくための仕組みが重要です。
Web3の分野では、国内外からコミュニティへ参加しているメリットを享受できる仕組みの設計が重要になってきます。
具体的には、ブロックチェーンやトークンを活用することで、そのコミュニティへの貢献度に応じたインセンティブを還元できる仕組み設計と運営方法を実践しています。
須田氏:
その地域特有のネットワークやパワーバランスなどを理解しておくことが非常に大事です。私も飛騨高山へ月1回のペースで行くようになり、1年ぐらいするとその季節のお祭りや地域の方々が何を大事にされているかが段々と見えてくるようになりました。時間と頻度も同様に重要だと思います。
平野氏:
外部の方々が地域のネットワークコミュニティへ積極的に参加することが、住民とのサステナブルな繋がりを設計していくうえで非常に重要です。また、そのようなコミュニティがない場合は、地域内外の繋がりをメタバース空間上で構築し、そこで継続的に交流できる仕組みを新たに作り上げいく必要もあると思います。
第3部「デジタルな仕掛けづくり」
<モデレーター>
株式会社All Japan Tourism Alliance 代表取締役 山本真理子
<登壇者>
iPresence合同会社 Founder/Presidentクリストファーズ・クリスフランシス_氏
ANA NEO株式会社 事業戦略ディレクター 室矢昌樹_氏
PARDEY株式会社 Founder / CEO 斎善晴_氏(オンラインで参加)
Q1.デジタルがもたらす観光領域における可能性とは何でしょうか?
クリストファーズ氏:
旅行の前段階における体験情報収集という意味合いでは、デジタルがもたらす付加価値が大きく上がってきています。iPresence が提供しているロボットやGoogle_Earthなどによって、情報収集や遠隔地を体験する方法が劇的に変化しており、今後は、デジタルツインのようなメタバース空間を使って色々な人々が交流できる新しい切り口での広がりが加速していくと考えています。一方で、現地ならではの五感に訴える体験に勝るものはないということも、事実として認識しておくべきでしょう。
室矢氏:
別の観点として、今まで知らなかったことを知ることができることも1つの可能性だと思います。ANA NEO社のメタバース事業では、地方の魅力的な産品や景観が多数ある中で、これまで国内外の方々に上手く魅力を発信しきれていなかった部分を、メタバース空間によって知ってもらう機会を作れると考えています。
斎氏:
NFTを活用した観光及び地方創生のアプローチが増えてきています。具体的には、NFTを活用したスタンプラリーによって、実際に現地へ足を運び、その土地の様々な場所を回遊できる仕組みで地域活性化に繋げていきたいと考えています。
Q2.大阪・関西万博における経済効果を地方が享受するために、今からできることは何でしょうか?
クリストファーズ氏:
海外の観光客向けに、デジタル上でどのようなアピールできるかが重要です。例えば、大阪・関西万博の周辺地域にも足を運んでいただくために、デジタルツインのようなメタバース空間を活用したアプローチの仕組みを考える必要があるのではないでしょうか。
室矢氏:
世界中の人たちが日本の魅力を事前に知ってもらえる仕掛けづくりが重要だと思います。これまで全世界に発信できなかった情報を、ANA NEOのメタバース空間を使うことで発信することができる。それによって、「素敵な景観だからぜひ行ってみたい」「これを買ってみたい」など、メタバース空間を通じて体験したことをリアルと連動させることで、現地での消費を促していきたい。
斎氏:
デジタル技術を活用することで地方への誘致が可能になります。大阪・関西万博に訪れた証をNFTで発行し、他の地方で受けられるサービスと連動する仕組みを構築することで、人の流動が起こると考えています。
山本:
2年後の大阪・関西万博の開催までに、今から様々な取り組みを実験的に行っていくことが何より大切です。より具体的な成果や価値を生み出すことができると考えています。
次回のWeb3シンポジウムは「医療・ヘルスケア×メタバース(仮)」をテーマに、4月中旬開催予定です。皆さまのご参加をお待ちしております。