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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

HR 2023.09.20 人生の節目に寄り添う「ワークライフファシリテーター」として

パソナグループは2022年より、「ワークライフファシリテーター」という民間資格を立ち上げ、育成を開始しました。ワークライフファシリテーターとは、キャリアコンサルティングのみならず、育児や介護等の様々なライフイベントに関する専門知識を持ち、“キャリア”と“ライフ”の多様な相談に対応する専門家。パソナグループ内において、働く人たちに寄り添う役割を担う職種として2016年に誕生。

2020年には人事部門に専門部署ができ、現在10人のメンバーが、グループ約70社、2万人以上を対象に活動しています。「ワークライフファシリテーター協会」養成講座は一般の方もご参加可能で、これまでに209名が資格を取得し卒業しました。

今回は、パソナグループ HR本部 ワークライフファシリテーターグループ長の齋藤満梨奈さんにお話を伺いました。

人生経験豊富なワークライフファシリテーター


―ワークライフファシリテーターとは、どういうお仕事ですか。


ワークライフファシリテーターというのはパソナグループが生み出した一つの役割です。仕事(ワーク)と生活(ライフ)は切り離せず、誰しも人生の時期によっては、どちらかに軸足を置かなくてはいけないこともあると思います。「置きたい」こともあれば、「置かざるを得ない」こともあると思いますが、多くの人は、その選択に非常に悩み、同僚や上司、家族に相談したりしながら、それぞれ乗り越えていらっしゃると思います。

パソナグループは2016年、そういう社員の人生の大事な節目に寄り添う専門人材を作ろうと考え、生まれたのが「ワークライフファシリテーター」という職種です。2020年にコロナ禍が始まると、これはもう組織にした方がいいという経営判断があり、当時既に人生経験豊かな3人のワークライフファシリテーターがいたのですが、他の人事の役割との兼務ではなく専任になり、緊急事態宣言が発出された5か月後には組織となり「相談窓口」が誕生しました。



―齋藤さんは、その専門組織を任されたわけですが、入社してからのキャリアを教えてください

新卒でパソナに入社し、最初は新宿支店の西東京チームに配属され、人材派遣サービスの内勤コーディネーターの仕事をしました。パソナは性別に関係なく、意欲ある社員にはチャンスをくれる会社なので、そこで少しずつステップアップさせてもらい、チーフコーディネーターという立場となり、6人ほどの部下のマネジメントを行いました。その後、30人~60人ほどの部の副部長として、部長の補佐的な役割をしながら、部内のオペレーションや事務まわりの責任者になりました。人材派遣の仕事には、11年間ほど携わらせていただきました。

何か新しいキャリアを積みたいと思っていた時にチャンスをいただいたのが、海外事業部でのお仕事です。実は私は、ちょうどイラク戦争の時に大学生で、国際社会のことを考えたいと国際政治学部に入学しました。もともと海外の人と関わり、人と人を繋いでいく仕事にも興味があったので、入社10年目くらいに社内のグローバル研修に参加。その約半年後、海外事業部に来てみないかと言っていただいて、約3年間働きました。

そして、2019年末に人事部に異動。すぐにコロナ禍が始まってしまって、人事部員として社員の方々の面談をするようになりました。そして2020年、ワークライフファシリテーターの新組織の立ち上げに伴い、現在の部署に配属されました。

―相談に乗ってくださるワークライフファシリテーターは、どんな方たちですか

私はもともと11年間の人材派遣事業のコーディネーター経験で、3,000人くらいのエキスパートスタッフの方々と関わってきました。人事部に異動してからは社員の皆さんの相談に乗ってきましたが、これまでの経験を活かすことができる、すごくやりがいのある仕事だなと思いました。

私は、新たな部署に責任者として着任し、私を含めてメンバーが10人いますが、現在でも周りの皆さんから教えてもらうことばかりです。他の会社で培った経験を活かして定年後にパソナグループに入社した方や、幅広い知見を持つ役職経験者、経営に携わってこられた方、ハローワークのようなところで10年以上キャリア相談に乗られていた方、アロマサロンでお客様の相談に乗っていた方や自衛隊にいた方など、多彩なメンバーが揃っていますが、皆さん素晴らしい人格者ばかりです。

年間3,000面談を実施


―どのぐらい相談件数があるのですか


初年度は、リモートも含めて延べ1,000回くらいワークライフファシリテーターグループとして面談しました。直近の2022年度は、年間で約3,000回くらいでしょうか。初年度から比べると、だいぶ増えましたね。パソナグループは事業の進化のスピードが速く、新しい事にもどんどんと挑戦しているため、人によってはそうした変化を不安に思い、相談を希望する方もいます。



―社員から「相談に乗ってください」と来るものなのでしょうか

もちろん、今ではそういう方もいますが、特に最初の頃はまだまだ社内での周知が必要な状態で、こちらからアプローチしていきました。これだけ素晴らしいカウンセラーが揃っているのに、待っているだけで機会を提供できないのは申し訳ないですからね。

加えて、当時はコロナ禍の真っ最中でしたので、心身に不調を訴える方も多かったです。突然リモートワークが始まって、上司や同僚に相談するタイミングが掴めずに、どんどん気分が塞ぎがちになったり、外に出て遊ぶこともできず、家族がいる中での在宅ワークがストレスになったり…と、色々な不安の声を聞くようになりました。

パソナの中には、クライアント企業の「健康経営」を支援する営業部門もあるので、そこの方とも話し合い、社員のメンタルヘルスのリテラシーを上げるための社内セミナーなども実施しました。一度に1,000人ほどが集まるZoomセミナーの場で、主催者として顔を出して、「いつでも相談してくださいね」と告知活動を行ったりしました。また、パソナグループには70社程の会社あり、グループ会社間での出向者も多いです。しかし、出向者の中には、慣れない環境での新たな業務や、中長期的なキャリアに向けて不安を抱える方もいます。そのため、出向者の方に向けてアプローチして、面談をしたこともあります。


▲昨年実施した、「ワクワクWLF(ワークライフファシリテーター)&保健師 懇親会」

―アプローチした時の、社員の方々の反応はいかがですか

直接、対象の方にご連絡すると「何でですか」と驚かれることもありますが(笑)、「皆さんの話を聞く機会を持ちたい」とお話しします。

守秘義務のこともお伝えすると、「ワークライフファシリテーターの齋藤さんだけで留めておいてください」というような、誰にも言えない話を伺うこともありますし、「人事として、普段は話せない思いをお聞きしたいんです」とご説明すると、「じゃあ、ぜひ」と言って話してくれるケースもあります。ただ、最近はワークライフファシリテーターという取り組み自体が社内に浸透してきたため、断られることはほとんどなくなりました。

心がけているのは、相談者とのメールでのやりとりや電話の声の様子から、気持ちをキャッチすることです。その方なりのリズムもありますし、人間ですから当然気持ちのバイオリズムもあります。メンバーの皆さんは、本当に上手にやってくれています。

ただ、パソナグループの社員の方は、もともとオープンマインドな方が多いので、それに助けられている面もあるかもしれないですね。人材サービスを手がける会社ですから、社員にはキャリアコンサルタントの資格を持ってる人も多く、普段は話を聞くことばかりなんですよ。人の相談は解決しているけれど、なかなか自分の話をする機会はない。そういう方こそ、逆の立場になっていただくと、「いいんですか?じゃあ話します!」と色々と相談していただくことも多いです。

ただし、私たちが過信してはいけないこととして、「私が解決してあげたい」という気持ちを持ちすぎてはいけないと思います。私たちワークライフファシリテーターは、あくまでその方が自身の力で課題を乗り越えていくための「影のサポーター」であり「伴走者」だというところは忘れてはいけないと思います。

広範囲の学びを常にアップデート


―いま目指しているのはどんなことですか


キャリアにしても人生にしても、日本だけでなく世界的に、個人主義というか、個人がやりたいことを勉強して、経験を積んで、努力して頑張って成功していこうという「自助努力」を求める風潮がありますが、個人的には少し懐疑心があります。一人ひとりが主体性を持って、「個人としてのやりたいこと」があるのは良いことですし、ないよりはある状態の方がきっと幸せなのでしょうが、それが行き過ぎてしまうと軋轢が起きてしまうのではないかと思います。

組織の中で、「この人にはこういう役割を担ってほしい」と期待されることもありますし、「周りの人にとって、自分はどういう存在なのか」を理解しながら、協調性を発揮して活躍することも、大切なキャリアの築き方・生き方のひとつだと思います。そういう観点で、「その件は上司とちゃんと話した方がいいと思いますよ」とアドバイスしたり、場合によっては「その上司に私たちからお伝えしましょうか」等の対応ができるのは、背景や個別事情がよくわかっている社内カウンセラーならではですね。

また、ワークライフファシリテーターグループでは、定期的に社内の状況に関する勉強会も実施しています。会社の組織や事業のあり方は時代に合わせてどんどん変わっていきますので、例えば人材派遣部門には今、こういう職種・役職の人がいて、その人達はこういうミッションで、こういう目標を持って働いてる、とか。その部署の社員の方をお呼びして、「どんなお仕事をしているのですか」と教えてもらい、この部門の人は今、こういう忙しさの渦中にいるのか、みたいなことを学ぶ機会を作ったりもします。

学びという意味では、広範囲の知識を常にアップデートする必要があるので、最近はメンバー皆で集まって、チームの臨床心理士の資格を持っている方に講師になっていただいて心理学関連の勉強をしたりもしています。

―どんな時にやりがいを感じますか

たくさんありますが、面談した方が、その時のことをすごく良く覚えていてくださっているケースが多く、後日「齋藤さんにあの時言われた言葉で背中を押されて、いまこんな資格取ったんですよ」とか、「上司に思いを伝えられたんですよ」と言ってくれる人がいるんですね。そういう時はすごく嬉しいです!ひとの人生にそんなに関われることって、あまりないじゃないですか!

「私も、ワークライフファシリテーターになりたいです」とか「養成コースに通っています。すごく憧れの職種です」なんて言ってくれる方も増えてきているのもとても嬉しいです。ワークライフファシリテーターという職種は、それまでの仕事や人生でご苦労された方ほど活躍できる仕事だと思うんです。私も振り返れば失敗だらけのキャリアで、組織の中でうまく立ち回れなかった時に、人事の方に助けてもらったりしました。そうした経験も、現在活かされていると思います。

―反対に自分が疲れてしまったりすることはありませんか

初年度は、自分の身体づくり、心のバランスも含めて、上手くできてなかったと思っています。しかしこの3年間で、住まいを都心から海の近くに転居し、通勤時間が長くはなりましたが、その時間を面談後の感情の高ぶりを徐々にクールダウンをするのに充てています。多様な経験を持つ皆さんと面談で話すにあたっては色々な知識が必要なので、朝の通勤時間は読書をしたり、AUDIBLEで“音で聞く読書“もするようになりました。また、リフレッシュするために筋トレを始めたり、自分自身の「アップデート」はかなり意識的にしていますね。

コロナ禍で始めたのが、通信大学の大学生になったことです。現在は哲学を学んでいます。哲学という、一見、日常生活とかけ離れた世界が、実は色々な部分で繋がっていて、仕事に活かされたりもしています。


▲趣味の山登り

社会を良くすることに携わるのが目標


―パソナグループの魅力を教えてください


意欲があれば「やらせてくれる」「任せてくれる」ことではないでしょうか。もちろん私にも苦しい時期はありましたし、面談で社員の皆さんの話を聞いていても、誰しもそうした時期はあるのですが、きちんと「自分の人生のハンドル」を持たせてくれて、「あなたはどうしたいの」「どういう人生を、どういうキャリアを歩みたいの」と投げかけながら、任せてくれるところだと思います。
それは、会社として「ワークライフファシリテーター」という新しい職種を創った理由にも繋がっている気がします。一人だけではできないこともあるからこそ、そういう専門人材の力を借りて自律的なキャリアを創っていきなさいというメッセージを、すごく感じます。

―今後の目標を教えてください

私自身、まだまだ何10年と働く世代なので、僭越ではありますが「社会を良くしたぞ」と言えるような仕事に携わりたいと、漠然と思ってます。
パソナに入社したのも、「社会の問題点を解決する」という企業理念に惹かれたんだと思いますし、例えば子供を育てながら働いている方達の環境をもっと良くしたり、働きすぎな日本人の仕事をもっと効率化していったりしたいなと思っています。一人の力は小さいですが、「世の中の価値感を変えられたよね」と誇れる仕事に携われたらいいですね。

テクノロジーの進化はありがたいのですが、テレワークの進化によって際限なくいつまででも仕事が「できてしまう」環境にもなりました。働くことに対する、日本人の価値観から変えないといけないのではないかと思います。「ご飯は家族と一緒に食べよう」とか、当たり前のように思えることが、どうして進まないんだろうなぁと。(笑)

今、社会全体に広がる不安とか不満みたいなものを、どうしたら良くできるのだろう。どうしてこんなに若い人ほど生き急いでいて、常に何かに追い立てられているんだろう。そんな人たちに向けて、自分は何ができるんだろう。そんなことを考えながら、ワークライフファシリテーターとして、まずは目の前の人の悩みに寄り添う毎日です。

そういう意味でも、ワークライフファシリテーターとして活躍する仲間をもっともっと増やして、社会を少しでも良い方向に変えていけたらなと思います。 



▼ワークライフファシリテーター協会HP
https://pasona-worklife.net/

 

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