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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

HR 2017.03.16 多様性を生み出す「真の働き方改革」とは何か【前編】

文:INITIATIVE編集部

パソナグループは、真に豊かな働き方のできる社会を創るためのアクションを「Smart Life Initiative(スマートライフ・イニシアティブ)」と位置づけ、多様な働き方の実現に向けてさまざまな取り組みを行っています。現在、同一労働同一賃金の実現や長時間労働の是正を目指して政府が進める「働き方改革」が社会的な関心を集めていますが、今回は前編と後編に分けて、企業人事に求められる働く人の視点に立った「真の働き方改革」のあり方を考えます。



真の「働き方改革」とは


2016年9月、政府の「働き方改革実現会議」がスタートしました。一億総活躍社会の実現を掲げる安倍政権の構造改革の柱と位置づけられ、同一労働同一賃金の実現による処遇改善のほか、長時間労働の是正によるワーク・ライフ・バランスの改善や女性・高齢者の就業促進などが中心テーマに据えられています。

働き方改革が議論される場合、「格差是正のための法改正」や「労使協定のあり方の見直し」など、労働を取り巻く諸制度の議論が優先される傾向があります。
しかしながら、すべての人が個人の価値観に合わせて豊かな人生設計が描ける社会を実現するという、「真の働き方改革」を考える上では、働く人の視点に立つことが何よりも大切です。

そして、働く一人ひとりが活き活きと働く環境を整えるために、各企業の人事部門に期待される役割は非常に大きいと言えるでしょう。各企業においていかにして社員の才能・能力を引き出し、優秀な社員が自由に能力を発揮できる組織や制度、社内の意識を作るか。「真の働き方改革」の本当の主役は、何よりも働く一人ひとりであり、企業です。

社員を信頼して柔軟な働き方を実現


働き方改革実現会議でも重要なテーマに位置づけられる「柔軟な働き方」。(公財)日本生産性本部が上場企業を対象に行った調査によると、フレックスタイム制や在宅勤務制度など働き方の多様化・柔軟化につながる施策をすでに導入している企業の多くが、施策が生産性向上に「大いに効果あり」「やや効果あり」と回答しています。
一方、フレックスタイム制(約5割の企業が導入)を除くと、その他の施策(在宅勤務、テレワーク、裁量労働時間制など)を導入している企業の割合は、各施策とも1〜2割にとどまっているのが現状です(「第15回日本的雇用・人事の変容に関する調査」、2016年)。

日本全体における柔軟な働き方の実現は、上場企業と言えどもまだ道半ばと言えるでしょう。

そうした中、ユニリーバ・ジャパンは2016年7月、すべての社員がそれぞれのライフスタイルを継続して楽しむことで自分らしく働き、生産性を高められるよう、働く場所・時間を社員が自由に選べる新人事制度「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を導入しました。

WAAでは一般的なフレックスタイム制や在宅勤務制度からさらに踏み込み、コアタイムを設けず社員が平日の6時〜21時の間で自由に勤務時間や休憩時間を決められるほか、自宅だけではなくカフェや図書館など、どこでも自由に働く場所を選ぶことができます。
また、工場勤務などを除くすべての社員が対象である点や、上司に申請をすれば利用理由は問われないこと、利用日数や時間数などに上限がないことも特徴です。

導入にあたってはおよそ2年間にわたり、「社員がサボらないか」「コミュニケーションはうまく取れるか」などの懸念事項や、従来の人事労務制度との整合性、法的リスクなどの観点からさまざまな検討が加えられました。
一方で、そうした懸念事項をすべてクリアしたとしても、「最終的にはやってみないとわからない、問題が発生したら変えていく」という考えのもと、強力な経営トップのコミットメントで導入に踏み切りました。
ユニリーバ・ジャパン 取締役人事総務本部長 島田由香氏は「これからの人事に求められることは『心配』することではなく『信頼』すること。WAAは完全に性善説で運用しています」と力を込めます。

導入から3カ月が経過した時点の社内アンケートでは、約9割の社員がWAAを利用しており、そのうち約7割が「毎日にポジティブな変化があった」と回答しています。
社員からは「自分で働くことを選択している気がして、働くことのモチベーションが上がった」「より効率的で幸せな働き方を考えるようになった」などの声が寄せられ、非常に好意的に受け止められています。さらに、労働時間が短縮される一方で企業業績は好調に推移しており、同社は「導入は成功だった」と評価しています。

「企業から働き方を変えていきたい。政府が制度をいかに変えようが、私たち企業が変わらないといけません」(島田氏)。同社の事例は、働き方改革に向けて挑戦する企業を勇気づけてくれるでしょう。



社外での人脈と経験が人材を育む


ユニリーバ・ジャパンの事例に代表されるように、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方が広がりを見せる中、副業(兼業)、パラレルワークに対しても関心が高まっています。

その背景には、世の中のテクノロジーやビジネスのあり方が大きく変化する中で、働く側の意識も変化していることがあります。会社では得られない経験やスキルを身につけたい、新たな人脈を構築したいというニーズや、家族との時間の確保、仕事を通じた社会への貢献など、自らの価値観に合わせた働き方へのニーズが高まっています。

また企業としても、社員が副業やパラレルワークをすることで新たなイノベーションを生み出す知見や着想を得ることができたり、それを推進すること自体が優秀な人材を惹きつける企業の魅力になるケースもあります。

しかしながら、副業を認めている企業は依然として限定的です。中小企業庁が全国の企業を対象に実施した調査によると、副業・兼業を「認めていない」企業は85.3%に上りました。また実態として、副業・兼業を容認している企業は情報通信業に関連する企業が多数を占めています(「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査」、2015年)。
多くの企業では、時間や体力などの面での本業への悪影響や、職場内で不公平感が生じることなどへの懸念により、副業の容認・推奨には及び腰なのが現状です。

2016年2月、この副業をめぐる議論に一石が投じられました。ロート製薬が開始した「社外チャレンジワーク制度」です。
入社3年目以上の社員を対象に、本業に支障をきたさない範囲(就業時間外や休日のみ)で兼業を容認・支援することを発表しました。これまでもIT企業を中心に副業・兼業を容認する会社はあったものの、それを大手メーカーであるロート製薬が大々的に発表したことで大きな注目を集めました。

60名以上の社員が手を挙げたこの制度は、社員による人事制度改革プロジェクトから生まれました。会社の枠を超えて働くことで、自立・自走する人材や、社会に貢献する人材を育てることができるという考えです。

例えば、普段は開発部門で研究や製剤開発を行っているためお客様と直接接する機会の少ない社員が、週末にドラッグストアの調剤で働くことで、お客様の生の声に触れ、商品開発のアイデアなどに生かそうとしているケースがあります。他には、営業部門で働く社員が、副業として出身地である福島の活性化のために、地域の地酒を紹介するプロジェクトにかかわり、経営やマーケティングの視点を学んでいる事例もあります。

ロート製薬のこうした取り組みは、首相官邸で昨年10月に開催された、働き方改革に関する安倍首相との意見交換会でも紹介され、参加した同社社員からは「副業しているメンバーの周りに人が集まり、新しいコミュニケーションが生まれる」や、「仕事と自分のやりたいことを両立でき、とてもやりがいを感じている」などの意見が共有されました。

終身雇用がほころびを見せる中で、優秀な社員を自社のみで抱え込むことが難しくなる昨今、副業が可能なほどの高いスキルを有する人材に活躍の場として自社を選んでもらうためには、副業容認に向けた議論は避けて通ることがでないでしょう。

【後編】に続く
 

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