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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

ひと 2018.07.30 南部靖之コラム 「社会のあり方改革」を目指して


母から学んだ「価値観の多様性」


私が幼かった頃、母はいつも私に「算数で百点を取るのも、百メートル走で一番になるのも、絵が上手いのも、みんな素晴らしい才能だよ」と言ってくれました。この母の教育のおかげで誰とでも付き合うことができたので、自然とたくさんの友達ができました。

そして、絵を描くことが大好きだった私は、友達と毎日のように出かけては、色々な場所で写生をしていました。
ある日、絵を描くのに夢中になり、夕食も忘れて遅い時間に家に帰ったことがありました。そのとき一緒だった友達の母親は「遅くまで何をしていたの?絵では食べていけないよ」と言っていましたが、私の母は、私の絵を10円で買ってくれました。

そのお金で新しい絵の具が替えることよりも、「僕の絵を買ってくれた」ということが嬉しく、絵では誰にも負けないと大きな自信を持つことができました。

こうして私は母から、人にはそれぞれ得意なことがあること、そして人それぞれに価値をはかるものさしがあること、つまり「価値観の多様性」を教えてもらいました。

真に豊かな社会を目指す「社会のあり方改革」


この母の教えは、私の起業家としての生き方や考え方のベースになっています。

一人ひとりの価値観は多様であり、働き方や生き方の正解は一つではありません。育児や介護など色々な事情があって1日4時間のみ働く方、音楽やスポーツ、勉強との両立で週3日間だけ働く方、才能や能力を活かして複数の仕事をする方、自らの夢に向けて起業する方―。
100人の人がいれば、100通りの働き方があります。

42年前に私がパソナグループを創業した当時、働き方と言えば正社員かパート・アルバイトしかありませんでした。賃金においても男女の格差があり、企業規模による格差、すなわち“正社員格差”もありました。
また現代においても、社会の様々な制度や仕組みが、依然として大企業の正社員という働き方を前提に成り立っています。

しかしながら、何よりも大切なことは、一人ひとりがそれぞれの価値観やライフスタイルに合わせて、自由に働き方を選択できる仕組みを創ることです。働く人の価値観は多様であり、幸せや豊かさの基準は一人ひとり異なります。
もっと多様で自由な働き方が認められ、それぞれの生き方が尊重される社会こそが、本当の意味で「豊かな社会」なのではないでしょうか。

現代の日本社会が抱える様々な問題、例えば待機児童、シングルマザーやシニアの貧困、介護離職、少子高齢化、雇用のミスマッチなどの問題の本質は、一人ひとりの事情や価値観に応じて柔軟にかつ安心して働くことができる仕組み、また多様で細やかな教育の仕組みがないことです。

これからは、一人ひとりが自分に合った働き方を選べる環境を創っていかなければなりません。今年6月、「働き方改革」関連法が成立しましたが、今こそ企業側から見た「働き方改革」から一歩踏み込み、働く一人ひとりの目線に立った真に自由で豊かな社会を創る「社会のあり方改革」に取り組むべきときです。

鍵となる「互助の精神」


そして、その「社会のあり方改革」のヒントのひとつに、日本が昔から大切にしてきた「互助」という考え方があります。

かつての日本には、どの町や集落にも「向こう三軒両隣」の精神で、何かの時にはご近所同士が助け合う互助の習慣がありました。醤油の貸し借りのような長屋文化をはじめ、農家では田植えや稲刈りの時期には当たり前のように隣近所で助け合いました。
現代に比べると物質的には豊かとは言えなくとも、人と人との温かい交流やコミュニティがもたらす精神的な豊かさがあったのではないでしょうか。

現代でも一部の地域には、こうした互助の精神は残っています。収穫の時期に野菜や果物、お米などそれぞれが丹精を込めて作った自慢の農産物をお互いに交換し合ったり、働き盛りの若い夫婦のためにリタイアしたお年寄りがお子さんの面倒を見たり、逆にお年寄りが病院に行くときに若者が車で送ったり。
そうした地域では、一人ひとりの才能や能力を共有し、社会やコミュニティ全体で助け合う互助の精神のもと、「ミューチュアル・エコノミー(互助の経済)」が自然と成り立っているのです。

「社会のあり方改革」を実現するためには、かつての日本に存在し、今でも一部の地方に残る「ミューチュアル・エコノミー」というシステムに光を当てることが、一人ひとりがそれぞれの価値観に合わせて自由に働く、真に豊かな社会への大きな一歩となるはずです。

「社会のあり方改革」に向けたプラットフォーム


人はそれぞれ生まれながらにして、身体が強い人もいれば、弱い人もいます。音楽の才能に秀でた人もいれば、数学に強い人がいるなど、一人ひとりの才能や特技、生まれ持ったものは様々です。
しかし今の社会は、その弱い立場にある方々に合わせることが「正しいこと」であり「優しさ」であると考えられています。本来であれば、強い立場の人々がその才能や能力を活かして、弱い立場の人々を支えるのが、社会のあるべき姿ではないでしょうか。それこそが、本当の意味での「互助の精神」であり、個人の才能・能力を活かせる社会であると考えます。

パソナグループは今年4月、新会社「株式会社Job-Hub」を設立しました。多様な人材が自身のスキルを登録・共有し、企業が必要なスキルを持つ人材に業務を依頼することができるクラウドソーシングサービス「Job-Hub」を展開しています。

「Job-Hub」では、女性やシニア、若者など様々な人材が、場所や時間にとらわれずに、それぞれの才能・能力を活かすことができるプラットフォームを提供しています。さらに業務のマッチングにとどまらず、働く人を支える仕組みを社会全体やコミュニティ全体で創る「社会のあり方改革」のプラットフォームのひとつとして展開することを目指しています。

日本が昔から大切に育んできた、社会全体で働く一人ひとりを支える「互助の精神」。そうした“古くて新しい”考え方を、テクノロジーを活用しながら社会全体に広め、一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方で、豊かな人生設計を描ける社会を実現したい。

パソナグループはこれからも、真に豊かな社会の実現に向けて、「社会のあり方改革」に取り組んでまいります。

(2018年7月発行「HR VISION Vol.19」より)

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